金利が上がると、預金の利息や、個人年金の予定利率は上がります。「金利が上がるのは良いこと」と感じる方も多いでしょう。けれども、金利には、もう一つの顔があります。借りる側にとっては、金利の上昇は、返済の負担が重くなるということです。
金利が高かった時代に、個人年金などで資産を作れた方がいる一方で、同じ時代に、住宅ローンを組んでいた方もいます。それでも家計が成り立っていたのは、金利と同時に、賃金も上がっていたからです。このコラムでは、公的データをもとに、金利と賃金、そして住宅ローンの関係を整理します。
このコラムのポイント
1990年12月の住宅ローンの変動金利は、8.5%でした(住宅金融支援機構の資料をもとにした、りそな銀行の解説)。1990年は、日本銀行の基準貸付利率も6.0%(1990年8月)、10年国債の利回りも平均で6.87%と、金利が高い水準にありました。
その後、金利は下がり続け、2016年にはマイナス金利政策が導入されて、住宅ローン金利は歴史的な低水準になりました。そこから、再び金利が上昇しています。
| 時期 | 住宅ローンなどの水準 |
|---|---|
| 1990年12月 | 住宅ローンの変動金利 8.5% |
| 2026年7月 | 主要銀行の変動金利の基準金利 年3.125%前後、フラット35の最も多い金利 3.14% |
| 2026年8月〜 | 短期プライムレート(最頻値)2.375% |
※実際に借りるときの金利は、基準金利から優遇が引かれるなど、金融機関や契約によって異なります。上の表は、「水準の目安」としてご覧ください。
金利が高くても、家計が成り立っていた理由の一つが、賃金の上昇です。労働政策研究・研修機構(JILPT)の資料によると、春闘の賃上げは、1961年から1975年までの15年間で、1963年を除いて2ケタの大幅な賃上げが続きました。1974年の賃上げは32.9%に達しています。
バブル期の入り口でも、連合の集計で、1990年の賃上げは5.95%、1991年は5.66%でした。高度経済成長期には、金利が高く、賃金も上がり、経済全体が成長していたのです。
では、現在はどうでしょうか。公的なデータで見てみましょう。
| 項目 | データ |
|---|---|
| 日本銀行の政策金利 | 1.25%程度(2026年9月に引き上げ。1995年以来31年ぶりの水準) |
| 10年国債の利回り | 2.817%(2026年10月30日。2.8%台は1997年以来) |
| 春闘の賃上げ率(連合の最終集計) | 2024年 5.10%、2025年 5.25%、2026年 5.01%(3年連続で5%台) |
| 実質賃金(厚生労働省・毎月勤労統計) | 2026年8月 前年同月比+1.5%(8か月連続のプラス) |
| 消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合) | 2026年8月 前年同月比+2.2% |
近年は、賃上げが進んでおり、実質賃金も、2026年は8か月連続で、プラスになっています。この点は、「賃金の伸びが伴わない」とは言い切れない、前向きな材料です。
ただし、これらの数字は、全体の平均です。賃上げの状況は、企業の規模、業種、働き方(正社員・パートなど)によって異なります。また、年金を中心に暮らす方や、賃上げの恩恵を受けにくい方にとっては、物価の上昇や、ローン金利の上昇が、そのまま負担になる場合もあります。
たとえば、3,000万円を、35年間(420回)の元利均等返済で借りた場合の、毎月の返済額の目安は、次のとおりです。
| 借入金利 | 毎月の返済額 | 返済総額 |
|---|---|---|
| 1% | 84,686円 | 約3,557万円 |
| 2% | 99,379円(1%の場合より+14,693円、約17%増) | 約4,174万円 |
| 3% | 115,455円(1%の場合より+30,769円、約36%増) | 約4,849万円 |
※金利が一定の場合の試算です。変動金利は、返済額の見直しルールなどが、金融機関や商品によって異なります。
金利が1%から3%に上がると、毎月の返済額は、約3万円、約36%増えます。もし賃金がそのぶん上がらなければ、その差は、家計から出ていくことになります。高金利の時代に、ローン返済が成り立っていたのは、返済額の増加以上に、収入も増えていたからです。
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「住宅ローンの金利上昇が心配」「預金や個人年金を、どう考えればよいか分からない」という方は、現在のローンの条件や、加入中の保険の内容、毎月の収支がわかる書類を、お持ちください。ご家庭全体のお金の流れを、一緒に整理します。
預金の金利も上がる傾向がありますが、物価の上昇率と比べて、実質で増えているかが大切です。また、住宅ローンなどの借り入れがある場合は、返済の負担が増える面もあります。
高度経済成長期には、賃金も大きく上昇していたためです。春闘の賃上げは、1961年から1975年まで(1963年を除く)、2ケタが続きました。収入の増加が、金利の負担を支えていたといえます。
平均では、賃上げ率が5%台、実質賃金もプラスと、前向きな状況です。ただし、ご家庭の収入の伸びや、借入の金額・金利の種類によって異なります。ご自身の状況で確認しましょう。
借入金利の見直しの時期、返済額の見直しルール、今後の金利が上がった場合の返済額の試算を、借入先の金融機関で確認しておくと安心です。
金利が高い時代に、うまくいった人がいたのは、金利が高かったことだけでなく、賃金や経済も成長していたからです。金利が上がる今は、「貯める側」の追い風と、「借りる側」の逆風の両方があります。ご家庭の収入、ローン、資産を、あわせて確認してみてください。
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