「個人年金に入っていたおかげで、老後の資金ができた」。ご家族や周囲のシニアの方から、そんなお話を聞いたことはありませんか。その体験は、まちがいなく事実です。そして、「あなたたちも個人年金に入っておきなさい」と、お子さんやお孫さんにすすめる方も少なくありません。
ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。それは、個人年金が良かったのか、それとも「金利が高かった時代だったから」良かったのか、という点です。このコラムでは、公的なデータをもとに、昔と今の違いを整理します。個人年金が良い・悪いと決めつけるものではなく、「何が結果を左右するのか」を知るための材料としてお読みください。
このコラムのポイント
定額型の個人年金は、払い込んだ保険料を、保険会社が「一般勘定」で運用します。契約するときに「予定利率」が決まり、その利率をもとに、将来受け取る年金額の水準が決まります。生命保険文化センターの説明でも、定額型は、契約時に定めた予定利率が保証された一般勘定で、安全性を重視して運用するとされています。
つまり、高い予定利率の時代に契約すれば、その高い利率が、契約期間を通して続くことになります。これが、高金利の時代に個人年金で成果を出せた、大きな理由です。
生命保険料の計算の基準になる「標準利率」は、金融庁が定めています。保険期間20年超の場合の水準は、次のように推移してきました。
| 時期 | 標準的な予定利率(標準利率) |
|---|---|
| 1985年〜1993年(標準利率の制度導入前) | 5.5% |
| 1996年4月(標準利率制度の導入) | 2.75% |
| 1999年4月 | 2.0% |
| 2001年4月 | 1.5% |
| 2013年4月 | 1.0% |
| 2017年4月 | 0.25% |
※標準利率は責任準備金の計算に使う基準で、各社の予定利率とは別のものです。ただし、各社が予定利率を決める際の参考にされています。
財務省が公表している、10年国債の利回り(年平均)は、次のとおりです。
| 年 | 10年国債利回り(平均) |
|---|---|
| 1990年 | 6.87%(1990年9月には8.1%台) |
| 1995年 | 3.46% |
| 2000年 | 1.75% |
| 2010年 | 1.18% |
| 2020年 | 0.01% |
| 2024年 | 0.91% |
| 2025年 | 1.54% |
| 2026年10月30日 | 2.817% |
1990年のピーク時には8%を超えていましたが、その後は下がり続け、2020年にはほぼゼロになりました。そして、2026年は、日本銀行の利上げなどを背景に、再び上昇しています。
| 時期 | 基準貸付利率(かつての公定歩合) |
|---|---|
| 1980年3月 | 9.00% |
| 1990年8月 | 6.00% |
| 1995年9月 | 0.50% |
| 2026年9月24日 | 1.50% |
日本銀行は、2026年9月に、政策金利(無担保コールレートの誘導目標)を1.25%程度に引き上げました。1995年以来、31年ぶりの水準です。
では、定額型の個人年金が運用される「一般勘定」は、実際にどのような資産で運用されているのでしょうか。生命保険協会の「生命保険の動向」(2023年度)によると、生命保険会社全体の一般勘定の資産の内訳は、次のとおりです。
| 資産 | 総資産に占める割合 | 運用利回り(2023年度) |
|---|---|---|
| 公社債(国債・地方債・社債) | 45.9% | 1.32% |
| 外国証券 | 25.0% | 5.95% |
| 株式 | 7.7% | 11.17% |
| 一般貸付 | — | 3.07% |
一般勘定全体の利回りは2.75%でした。公社債が約半分を占め、そのうち国債が有価証券の約46.5%を占めます。つまり、定額型の個人年金の成績は、国内の金利の水準に強く影響される仕組みです。金利が高ければ、運用の成績も良くなりやすく、金利が低ければ、予定利率も下がります。
金利が再び上がっている影響で、複数の生命保険会社が、個人年金保険の予定利率を引き上げていると、報道されています。「金利が高いと、個人年金の条件も良くなる」という関係は、今も働いています。
ただし、ここで気をつけたいのが「物価」との関係です。定額型の個人年金は、契約時に年金額の水準が決まります。物価が上がり続けると、同じ金額でも、買えるものが減ってしまいます。厚生労働省の毎月勤労統計調査では、2026年8月の消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合)は、前年同月比で2.2%上昇しています。金利の水準だけでなく、物価の上昇とあわせた「実質」の利回りで考えることが大切です。
「個人年金だから良い」のではなく、「いつ、どの金利で、何で運用される契約を結ぶか」が、結果を左右します。関連するコラムも、あわせてご覧ください。
ご家族から個人年金をすすめられた方、昔入った個人年金の内容がわからない方は、保険証券をお持ちください。予定利率、年金の受け取り方、保険料の負担などを、一緒に整理します。特定の商品をおすすめするのではなく、ご家庭の状況に合わせて、考える材料を整理することを大切にしています。
保険会社が、将来の運用の見込みとして、あらかじめ契約者に約束する利回りです。この利率を使って、保険料や年金額の水準が決まります。
一概には言えません。高い予定利率が続く点は、メリットですが、物価の上昇、ご家庭の資金の必要、受け取り開始の時期なども関係します。解約や見直しを考える場合は、保険会社や専門家に、解約した場合の返戻金なども確認してから判断しましょう。
金利が上がると、予定利率も上がる傾向があります。ただし、物価の動きや、他の選択肢、ご自身の資金の使い道とあわせて考えることが大切です。最終的な判断は、ご自身でお願いします。
生命保険会社の一般勘定の資産は、公社債が約45.9%(2023年度)を占めますが、外国証券や株式、貸付なども含まれます。内訳は、会社によって異なります。
高金利の時代に個人年金で成果を出せたのは、「個人年金だから」ではなく、「金利が高かったから」という面が大きいといえます。金利の水準、物価、受け取り方、そして「何で運用されるか」を、一つずつ確認して、ご自身の状況に合った選択を考えてみてください。
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